今週も、ユーザーのみなさんにお話を聞くデプスインタビューを続けていました。買うかどうか迷っている方や、自分には必要ないと考えている方が多い回だったのですが、聞いていて、多くの方に共通する話がありました。売り場での「人」の話です。
生活者は、売り場の人をよく見ている
ある商品に興味を持って、お店で店員さんに質問したのに、うまく答えてもらえなかった。それで買う気がなくなった、という話が、何人もの方から出てきました。興味があって足を運んでいるのに、肝心の説明が返ってこないと、気持ちが萎えてしまう。
一方で、店員さんのほうから勧められると、「どうせ売りたいだけだろう」と話半分で聞いてしまう、という声もありました。売り込みには、身がまえてしまうわけです。
そのなかで多くの方が口をそろえたのは、店員さん自身がその商品を使っていて、実感のこもった提案をしてくれるなら、その話は聞きたい、ということでした。聞きながら思ったのは、生活者が見ているのは商品の説明だけではなく、それを話す人そのものなのではないか、ということです。
私自身も、同じだった
そう感じたのには、自分の体験も重なっています。今週、私はトレイルランニング用のシューズを買いました。少し前に買った靴が、走ると足が痛むのが気になっていて、AIに相談したら、あるブランドを勧められた。それを探しに、お店へ行ってみたのです。
最初のお店には、目当ての靴の在庫がなく、試すことができませんでした。それでも店員さんが、「近くのあのお店なら置いていますよ」と、他のお店まで教えてくれたのです。その一言で私は、次はあの店員さんから買いたい、と思いました。
そして、そのお店に行くと、そちらにも在庫はありませんでした。。ただ、品ぞろえが豊富なこともあって、店員さんが私の悩みを聞きながら、あれこれ親身に提案してくれて、結局、自分に合う一足に出会えたのです。悩みを聞いてもらって、一緒に選んでもらう。その体験は、とても心地よいものでした。
信じたのは、説明ではなく、その人の判断だった
あとで振り返ると、私が信頼したのは、商品の説明そのものではありませんでした。
「うちにはないので、あちらのお店へ」という、売ろうとしていない言葉。「あなたなら、こちらのほうが合うと思います」という、私に合わせた提案。どちらも、マニュアルの決まり文句ではありませんでした。自分の店の売上より、私の目的を先に考えてくれた。だから信じられたのだと思います。
売ろうとしないことが、かえって信頼になる。自分の悩みを一緒に考えてもらえると、次もこの人から買いたくなる。
デプスで多くの方が「使っている人の実感なら聞きたい」と話したことにも通じるのではないか。使った経験、売れなくても他店を教える判断、相手に合わせた提案。形は違いますが、どれも「売るために用意された言葉」ではありませんでした。自分が知っていることや、目の前の相手を見て考えたことが、そのまま言葉になっていた。人が信じるのは、売るための言葉ではなく、相手のために考えた言葉なのだと思います。
マニュアルが悪いわけではありません。ただ、どれだけ良いマニュアルがあっても、それを本人の経験と言葉が超えてくる瞬間がある。私が心を動かされたのは、その瞬間でした。
最後に
私たちは販売の現場に、説明資料やマニュアルを用意して、「こう説明してください」とお願いしがちです。
でも今回考えたのは、「どう説明してもらうか」だけでなく、その人自身に「どう体験してもらうか」まで考える必要があるのではないか、ということでした。メーカーが販売の現場に用意すべきなのは、「正しい答え」なのでしょうか。それとも、自分で答えを持てるだけの体験なのでしょうか。
売り場のことを考えていたはずが、最後はマーケティングそのものの話に戻ってきました。今週は、そんなことを考えた一週間でした。
今週のひとりごとでした。

田口のひとりごと
ヘルスケアマーケティングの現場から
ウンログ代表田口が、商談の現場で感じたことや、うまくいった/いかなかった話しを、少しだけ言葉にしてみるコラムです。
【田口 敬 プロフィール】
ウンログ株式会社 代表取締役。
マーケティングコンサル、新規事業立上げ、Webエンジニアを経験し、2012年にウンログアプリを個人開発しリリース。2013年にウンログ株式会社を設立。ユーザー起点のたのしくわかりやすいUI/UX開発と確かな腸活情報発信にこだわり120万DLを突破。現在まで300社以上の食品メーカーの腸活マーケティングを支援。


